【アクチュアリーが解説】生命保険の契約当事者

     

生命保険の契約当事者

契約者、被保険者、保険金受取人などの違いを理解する。

契約当事者を理解する重要性

生命保険は契約であり、そこには明確な権利と義務の関係が存在します。契約に関わる登場人物(当事者)を正しく理解することは、保障内容の理解だけでなく、万一の際のトラブル防止や、受け取り時の税務を考える上で非常に重要です。

この記事では、契約の主体となる4つの当事者と、契約には関わるものの当事者ではない重要なプレイヤー(代理店・再保険会社)について解説します。

契約を構成する4人の当事者

生命保険契約は、主に以下の4者の関係で成り立っています。

  • 保険者: 保険契約を引き受け、保険金支払いの義務を負う生命保険会社です。
  • 保険契約者: 保険会社と契約を結び、契約上の権利(解約権など)と義務(保険料支払義務)を持つ人です。
  • 被保険者: その人の生死や病気が保険の対象となっている人です。
  • 保険金受取人: 保険金を受け取る権利を持つ人です。

なお、保険契約者、被保険者、保険金受取人は必ずしも別人である必要はなく、同一人物であるケースもたくさんあります。ただし、保険契約者・被保険者・保険金受取人の組み合わせによって課税関係が変わる点に注意が必要です。つまり、保険金を受け取った際にかかる税金の種類が保険契約者・被保険者・保険金受取人の組み合わせによって異なり、それによって手取り額が大きく変わる可能性があります。

死亡保険金の課税関係マトリクス

パターン 契約者 被保険者 受取人 課税される税金 考え方
相続型 相続税 夫の財産が妻に移ったとみなす
所得型 所得税(+住民税) 自分が掛けたお金が自分に戻った
贈与型 贈与税 夫のお金が子に移動したとみなす

この表からもわかる通り、保障性商品は「万が一の場合の備え」、貯蓄性商品は「資産形成」としての性格が強いことが読み取れます。

パターンごとの課税方法

相続型

死亡保険金は、500万円 × 法定相続人の数までは「非課税」となります。 この非課税枠を超える部分のみが相続税の課税対象として相続財産に加算されます。

 

所得型

保険金は、原則として一時所得に分類されます。一時所得は、保険金の額から今までに支払った保険料の総額を差し引いて求めます。一時所得の2分の1に相当する金額が給与所得などと合算されます。

一時所得の計算式: 総収入−支出(払込保険料等)−特別控除(最高50万円)

贈与型

保険金以外に贈与がない場合、受け取った保険金から基礎控除110万円を差し引いた金額に対して贈与税が課税されます。

 

保険者とは誰か

「保険者」としてリスクを引き受ける主体には、いくつかの種類があります。

  • 生命保険会社: 内閣総理大臣の免許を受け、保険業法に基づいて運営される株式会社や相互会社です。
  • 少額短期保険業者: 保険金額の上限(死亡保険なら300万円)や保険期間(1年以内)に制限がある代わりに、資本要件が保険会社よりも緩和されており、参入が容易な点に特徴があります。
  • 共済(Kyosai): JA共済や全労済(こくみん共済 coop)などが運営します。仕組みは保険とほぼ同じですが、根拠法が保険業法ではなく、消費生活協同組合法や農業協同組合法などに基づく「相互扶助」の制度です。用語も「保険料→掛金」「保険金→共済金」と異なります。

「仲介者」であって「当事者」ではない人たち

「ほけんの窓口」のような来店型ショップや、訪問販売を行う営業担当者は保険募集人と呼ばれ、保険会社と顧客の契約を「仲介(媒介)」する存在です。契約手続きにおいて重要な役割を果たしますが、法的な「契約当事者」には含まれません。

ここで重要なのが「告知受領権」の問題です。

保険契約者は、契約時に保険会社から質問された「危険に関する重要な事項」について、事実を正しく伝える義務があります。 一般的な生命保険の代理店や営業担当者には、告知を受ける権限がない点に注意が必要です。例えば、担当者に口頭で「実は最近、持病で通院していて……」と伝えたとしても、告知書(書面やタブレット画面)にその事実を記載しなければ、保険会社に伝えたことにはなりません。後日、告知義務違反として契約が解除されたり、保険金が支払われないトラブルの原因となります。「担当者に話したから大丈夫」は生命保険では通用しないことを覚えておいてください。

再保険会社との関係

保険会社は、引き受けたリスクが巨大であったり偏りがあったりする場合、そのリスクの一部を「再保険会社」に移転します。これを再保険と呼びます。いわば「保険会社のための保険」です。重要なのは、「元の保険契約」と「再保険契約」は法律上、完全に独立しているという点です。

契約者の皆さんが再保険会社の存在を意識することはありません。仮に再保険会社が倒産したとしても、皆さんが契約している保険会社は、契約通りの保険金を支払う義務(直接的な債務履行義務)を負い続けます。「再保険会社が潰れたから保険金が出ない」ということは法的に起こり得ません。

まとめ

生命保険契約は「保険者」「保険契約者」「被保険者」「保険金受取人」の4者で構成されています。それぞれの契約当事者が有する権利と義務を理解することが重要です。