【アクチュアリーが解説】アクチュアリーが加入している生命保険

     

アクチュアリーが加入している生命保険

アクチュアリーである自分自身をモデルケースとして生命保険を選択する際のポイントを紹介します。

本記事の目的と注意点

この記事の目的では、アクチュアリーである私をモデルケースとして、実際に加入している保険商品を説明するとともに、加入を決断するまでの思考過程を開示することで、みなさまの保険加入の参考にしていただくことです。

あくまでも私個人の経験談であり、アクチュアリーを代表する意見ではございません。また、特定の保険商品への加入を推奨するものでもありません。

本記事は私の加入内容そのものではなく、判断プロセスの再現可能性に価値があると考えています。

置かれている状況

家族構成・経済状況

家族構成や経済状況は、保険に加入する際の重要なポイントです。死亡保険に必要な保険金額や、医療保険の必要有無が異なってくるからです。

扶養家族がいれば、ご自身に万が一のことがあった場合に必要な生活費は大きく異なります。また、個人事業主か会社員かによって加入している社会保障も異なります。

自身の置かれている状況を整理するのが保険選びの第一歩です。

私自身は執筆時点において20代後半の男性で、すでに結婚しており子供が1人います。会社員で年収はおよそ1千万円、金融資産は2千万円ほどあります。夫婦共働きなので、妻の収入・金融資産も別途ございます。

個人保険以外の保障

会社員なので健康保険や厚生年金など基本的な社会保障はすべて加入しています。また、会社で加入する団体定期保険(保険金額100万円)に加入しています。

そのほか、住宅購入に伴い団体信用生命保険に加入しています。死亡時には債務残高の全額、三大疾病罹患時には債務残高の半額が免除されます。また、先進医療特約がついており、先進医療の自己負担部分に対する保障があります。

加入している団体信用生命保険の概要

  • 死亡時に債務残高の全額免除
  • 三大疾病罹患時に債務残高の半額免除
  • 就業不能時にはローン返済免除
  • 就業不能が12ヶ月継続した場合は債務残高の全額免除
  • 先進医療特約あり

加入している保険

死亡保険

基本的な考え方

私の場合はすでに一定の貯蓄がある上、妻の収入や団体信用生命保険もあります。遺族生活費・教育費・住宅費(団信控除後)を整理すると、追加の死亡保障は不要と判断しました。

そのため、保険が持つ貯蓄機能に関して国債より高い利回りを得られるのであれば検討してもよいと考えました。

学資保険の利回り

私が加入している死亡保険は学資保険です。

この学資保険は保険料が年間85,040円で、満期時に100万円の保険金が支払われます。なお、保険料払込期間は10年間、満期は17年です。

この保険に利回りを計算したところ、加入当時の国債利回りを上回りました。

株式や不動産は時価のボラティリティが大きく、売却したいタイミングで価格が下がっている可能性があります。家のリフォーム費用や老後資産であれば、売却するタイミングを後ろ倒しして、時価の回復を待つことができるかもしれませんが、学費は支払時期を後ろ倒しすることが難しいため、そのような対応はできません。そのため、学費は国債など確実な運用で確保したいと考え、学資保険への加入を決めました。

学資保険のキャッシュフロー(円)
保険年度 保険料 保険金 税還付金 期初割引率 期末割引率 保険料現価 保険金現価 税還付金現価
1 85,040 0 10,968 1.0000 0.9936 85,040 0 10,898
2 85,040 0 10,968 0.9936 0.9831 84,499 0 10,783
3 85,040 0 10,968 0.9831 0.9739 83,606 0 10,681
4 85,040 0 10,968 0.9739 0.9603 82,817 0 10,532
5 85,040 0 10,968 0.9603 0.9462 81,660 0 10,377
6 85,040 0 10,968 0.9462 0.9341 80,462 0 10,245
7 85,040 0 10,968 0.9341 0.9200 79,434 0 10,091
8 85,040 0 10,968 0.9200 0.9028 78,238 0 9,901
9 85,040 0 10,968 0.9028 0.8831 76,770 0 9,686
10 85,040 0 10,968 0.8831 0.8619 75,098 0 9,454
11 0 0 0 0.8619 0.8412 0 0 0
12 0 0 0 0.8412 0.8197 0 0 0
13 0 0 0 0.8197 0.7973 0 0 0
14 0 0 0 0.7973 0.7742 0 0 0
15 0 0 0 0.7742 0.7505 0 0 0
16 0 0 0 0.7505 0.7300 0 0 0
17 0 1,000,000 0 0.7300 0.7094 0 709,418 0
合計 850,400 1,000,000 109,680 807,625 709,418 102,649

学資保険の保険料現価は807,625円、保険金現価は709,418円です。保険料現価>保険金現価なので学資保険の利回りは国債利回りを下回っています。しかし、生命保険料控除による税還付金の現価が102,649円あります。これを考慮すると正味保険料現価は704,976円(=807,625円 – 102,649円)となり、正味保険料現価<保険金現価となります。これは学資保険の利回りが国債利回りを上回っていることを意味しています。

なお、現在価値を計算するにあたっては、この保険に加入した月の前月末にあたる2025年3月31日の国債利回りを使用しました。また、所得税率は20%としました。

医療保険

基本的な考え方

十分な金融資産がある場合、医療費リスクは保険ではなく貯蓄(自己保険)で対応するという選択肢も合理的です。私の場合、一定の貯蓄があるので、基本的には医療関連のリスク対応は「保有」でよいと考えました。

ただ、結論からいうと私は2つの医療保険に加入しています。なぜ加入したのか順を追って説明します。

加入している医療保険の概要

入院日額を主契約とする2つの終身医療保険に加入しています。一つ目は、入院日額3,000円でがん診断一時金特約と三大疾病一時金特約を付帯しています。二つ目は、入院日額5,000円で入院一時金特約を付帯しています。

入院した場合は一時金10万円に加えて、最初の60日間は1日あたり8,000円、60日超える120日までは1日あたり5,000円の給付金を受け取ることができます。

なお、医療保険が2契約になっている理由は、保険会社ごとに保険料が割安な特約が異なるためです。一方の保険会社は入院一時金特約の保険料が比較的低く、もう一方の保険会社はがん診断一時金特約や三大疾病一時金特約の保険料が比較的低いという特徴がありました。そのため、それぞれの保険会社の特徴を踏まえて、保険料効率のよい特約を組み合わせる形で現在の保障内容としています。

医療保険の契約条件表
給付内容 給付金額 月額保険料
入院日額 3,000円 375円
入院日額 5,000円 665円
入院一時金 10万円 603円
がん診断一時金 70万円 809円
三大疾病一時金 50万円 903円
合計 3,355円

※ がん診断一時金は1年に1回を限度に何度でも支払われます。初回はがんの診断確定、2回目以降はがん治療を目的とする入院、手術、抗がん剤治療、放射線治療が給付条件です。

※ 脳血管疾患・心疾患による一時金は1年に1回を限度に何度でも支払われます。1日以上の入院または手術が給付条件です。

入院上限日数と入院通算期間
給付 入院上限日数 入院通算期間
日額3,000円 60日 30日
日額5,000円 120日 90日
一時金10万円 90日

純保険料との比較

入院保障について、本サイトの純保険料計算ツール(Ver.1.0.3)を使って、安全割増を含まない純保険料を計算し、営業保険料と比較を行いました。なお、予定利率は加入当時の10年国債利回りを参考に2.0%に設定しました。

項目 営業保険料 純保険料 比率
入院日額3,000円 4,500円 4,040円 90%
入院日額5,000円 7,980円 7,750円 97%
入院一時金10万円 7,236円 7,982円 110%
合計 19,716円 19,772円 100%

※ 表の数値は年間保険料です。営業保険料は月額保険料を単純に12倍しました。

※ みなさまが支払う保険料は専門的には営業保険料と呼ばれ、保険会社の運営費用や利益が含まれています。ここでいう『安全割増を含まない純保険料』とは、これらの運営費用や利益をすべて取り除いた保険料で当サイトが独自に試算したものです。

この試算はあくまでも期待値ベースなので、結果的に健康で保険料がすべて払い損になる可能性もありますし、逆に入退院を繰り返し保険料の何倍もの給付金を受け取れる可能性もあります。しかしながら、期待値ベースで支払った保険料の100%が給付金として自分自身に戻ってくる試算結果となりました。

生命保険料控除による税還付金まで考慮すれば、比率は100%を超える可能性もあります。

純保険料が営業保険料に対して高く試算される理由

純保険料が営業保険料に対して高く試算される理由として2つの理由が考えられます。一つは、加入時の危険選択により健康状態がよい被保険者からなる集団を形成しているためです。実際、私が加入した保険は両方とも健康体料率が適用されています。

しかし、私個人の見解としては危険選択よりもこれから述べる2つ目の理由の方が影響が大きいと考えています。なぜなら、加入時点において健康であったとしても契約期間が長くなるにつれて、被保険者集団の健康状態は徐々に国民全体の健康状態に近づいていくと考えられるためです。

2つ目の理由とは、いずれの保険も無解約返戻金型商品であることです。無解約返戻金型とは、解約時に支払われる解約返戻金をゼロとする代わりに保険料を安くする工夫のことで、定期死亡保険など積立金の金額が小さい保険に広く導入されています。積立金が大きい保険(例:終身死亡保険)に適用すると、解約により没収される積立金が大きいため、保険料を引き下げる効果も大きくなります。しかし、解約する理由は経済状況が加入当時の想定から大きく変わるなどやむを得ないものも多く、そのような方の積立金をすべて没収するのは契約者保護の観点で問題があるため、積立金が少ない掛け捨て型を中心に導入されています。

一方、終身医療保険は掛け捨て型ではありますが、給付金支払いは70代以上の高齢層に集中しており、積立金は比較的大きなものとなります。したがって、無解約返戻金型による保険料引き下げ効果は相当に大きくなっています。

予定解約率別の安全割増を含まない純保険料
予定解約率 保険料合計 入院日額3,000円 入院日額5,000円 入院一時金10万円
0% 19,772円 4,040円 7,750円 7,982円
1% 16,267円 3,254円 6,228円 6,785円
2% 13,493円 2,639円 5,039円 5,815円
3% 11,348円 2,168円 4,132円 5,048円

表は予定解約率を設定した場合の純保険料です。予定解約率を2%にした場合は、純保険料は13,493円となり、営業保険料との比率は68%まで下がります。

がん診断一時金や三大疾病一時金は計算基礎率の作成が難しいため試算していませんが、無解約返戻金型という商品構造は共通しており、入院保障と近い試算結果になると思われます。

給付設計のポイント

解約しない前提だと正味保険料(= 営業保険料 – 税還付金)に対して、その100%以上が給付金として自分自身に戻ってくることが確認できました。逆にいうと中途解約すると大損します。そのため、加入にあたっては社会保障制度の改正や医療技術の発展により陳腐化しにくい給付設計が重要だと考えました。

具体的には、将来の治療技術の変化や社会保障制度の改正に対応できるように一時金を中心とする保障内容としつつ、脳梗塞・心疾患・精神疾患など長期入院となりやすい疾病にも備えるため、日数限度120日の保障を一部組み合わせています。

医療保険に加入した理由

この保険だけですべての医療費支出や収入減少を補填することはできません。また、一定の金融資産がある場合には医療費リスクは貯蓄(自己保険)で対応するという考え方も合理的です。

一方で、医療保険には将来キャッシュフローの不確実性を減少させる効果があります。期待値ベースでの収支を大きく損なわない範囲でこのような効果が得られるのであれば、保険加入には経済合理性があると考えました。

まとめ

  • 家族構成や経済状況など置かれている状況が異なれば、リスク対応も異なります。すべての人が加入すべき民間医療保険はありません
  • しかし、置かれている状況を整理し、根拠(ロジック)に基づいて加入の是非を判断するプロセスそのものは多くの方に共通しています

本シリーズでは生命保険の仕組み・価格・役割を説明してきました。本記事ではその知識をどのように意思決定に使うかを実例として示しました。ご自身の状況に合った適切な保険選択にこの記事が寄与できれば幸いです。