先進医療技術の評価期間推定
最尤推定により先進医療技術の評価期間を推定する方法を解説する
最尤推定法による評価期間の推定
本節では、先進医療技術の評価期間が指数分布に従うと仮定し、最尤推定法(Maximum Likelihood Estimation; MLE)を用いて平均評価期間を推定する方法を示します。ここでのポイントは、すべての技術の評価が終了しているわけではなく、一部は観測打ち切り(右打ち切り)データであるという点です。
分析対象
分析対象とする先進医療技術は2008年以降に新たに先進医療制度の対象となった技術のみとします。
モデルの仮定
評価期間 \( t \) が指数分布に従うと仮定します。その確率密度関数は次式で表されます。
\[ f(t; \lambda) = \lambda e^{-\lambda t}, \quad (t \ge 0) \]
このとき、平均評価期間は \( 1/\lambda \) です。
尤度関数の構築
6月30日時点で「評価が終了した技術」と「評価が継続中の技術」が存在します。 それぞれについて、観測値 \( T_i \)(経過年数)を用いると以下のように尤度を定義できます。
評価終了(観測値が確定)している場合:
\[ f(T_i; \lambda) = \lambda e^{-\lambda T_i} \]
評価継続中(右打ち切り)の場合:
\[ S(T_i; \lambda) = \int_{T_i}^{\infty} \lambda e^{-\lambda t} dt = e^{-\lambda T_i} \]
よって、全データに対する尤度関数 \( L(\lambda) \) は次のように書けます。
\[ L(\lambda) = \prod_{i \in \text{終了}} \lambda e^{-\lambda T_i} \times \prod_{j \in \text{継続}} e^{-\lambda T_j} \]
対数尤度関数
尤度関数の対数を取ると、
\[ \log L(\lambda) = n \log \lambda – \lambda \sum_{i \in \text{全体}} T_i \]
ここで、\( n \) は「評価が終了した技術の数」、 \(\sum_{i \in \text{全体}} T_i\) は「全技術(終了+継続)の経過年数の合計」です。
最尤推定量
尤度を最大化するために、\(\lambda\) で偏微分して 0 とおきます。
\[ \frac{\partial}{\partial \lambda} \log L(\lambda) = \frac{n}{\lambda} – \sum_{i \in \text{全体}} T_i = 0 \]
よって、最尤推定量 \(\hat{\lambda}\) は次式で与えられます。
\[ \hat{\lambda} = \frac{n}{\sum_{i \in \text{全体}} T_i} \]
このとき、平均評価期間の推定値は
実務的補正
報告書においてある技術が最後に現れた時点と実際に「評価終了」した時点までは平均して半年間のタイムラグがあると考えられます。 したがって、この遅れを考慮して推定値を次のように補正します。
\[ \hat{\lambda}’ = \frac{n}{\sum_{i \in \text{全体}} T_i + 0.5n} \]
すなわち、平均評価期間の補正推定値は次式で与えられます。
\[ \frac{1}{\hat{\lambda}’} = \frac{\sum_{i \in \text{全体}} T_i + 0.5n}{n} \]
このように、右打ち切りデータを含む指数分布モデルに対しても、 最尤推定法を用いることでシンプルかつ直感的に平均評価期間を推定できます。
