生命保険は投資としてアリ?保険商品のリターンが低い理由と加入したいケース
保険の弱点と、あえて加入する価値があるケースを整理
前回は、保険を投資商品として見る場合には「リターンが国債利回りを上回ること」が条件になると説明しました。
しかし現実には、生命保険会社が販売する商品でその条件を満たすものはほとんどありません。つまり、「リターンを目的にするなら保険より投資」というのは事実です。
保険商品のリターンが低い理由
では、なぜ保険商品のリターンは低く見えるのでしょうか。
その背景には、保険特有のコスト構造があります。
販売コスト
保険商品は複雑な仕組みを持つため、開発の段階で計算基礎率を設計したり、契約を管理するシステムを構築したりする必要があります。さらに、一般の方に商品を知ってもらうための広告宣伝や、営業職員による販売活動にも大きな費用がかかります。ネット系保険では営業職員を介さない分コストが削減できますが、その代わりに大規模なウェブ広告や比較サイトへの掲載料などが発生します。
集金コスト
保険料は毎月や毎年といった形で長期間にわたり徴収されます。その際、クレジットカード払いや口座振替では手数料が発生し、現金払いの場合には入金処理に人件費がかかります。国債や投資信託のように一度購入して終わりではなく、継続的な集金体制を維持する必要があるのが特徴です。
維持管理コスト
保険契約は長期にわたるため、その間に契約者からの相談対応や住所変更・給付金請求といった事務処理が多数発生します。さらに、保険会社は契約者の将来の保険金支払いに備えて「責任準備金」を積み立てますが、その金額を毎年正確に計算し、金融庁の厳しい規制に従って報告しなければなりません。こうした運営コストもすべて保険料に含まれています。
これらのコストは最終的に保険料に上乗せされます。一方で、国債や社債といった投資商品はこうした費用がかからないため、単純に利回りで比べれば保険が不利になるのは当然です。
さらに、近年はNISAやiDeCoといった少額投資の非課税制度も整っており、投資商品の優位性はますます高まっています。
保険商品が有力な投資先となる限定的なケース
それでも、状況によっては保険が投資商品として有力な選択肢になる場合があります。
税制上の優遇を利用するケース
生命保険商品単独でみたときのリターンが国債より低くても、税制上の優遇を含めてリターンを計算すると、魅力的な投資先になる可能性があります。
- 生命保険料控除: 生命保険料は所得控除の対象となります。所得税は累進課税なので、所得が高いほど控除の効果が大きくなります。実質的なリターンを「税引後」で考えると、国債などの利回りを上回ることもあり、このような場合には保険の経済合理性が出てきます。
- 相続税の非課税枠: 生命保険の死亡保険金には、法定相続人の数×500万円の非課税枠が設定されています。相続税の節税効果を含めた実質的なリターンで考えると、国債などの利回りを上回ることもあり、このような場合には保険の経済合理性が出てきます。
超長期で運用したいケース
国債や社債は満期が最長でも20年程度で、それ以上は流通量が少なく投資しにくいのが現実です。そのため長期で運用する場合、何度も再投資する必要があります。
一方で、生命保険商品には50年以上の契約を前提としたものもあります。長期的に金利が下がる局面では、こうした商品を利用することで「高い予定利率を長期間ロックインできる」というメリットがあります。
まとめ
- 保険を投資商品として見た場合、保険特有のコスト構造のためにリターンはほかの投資商品に劣ります。
- しかし、税制優遇を活用できる人や、超長期の金利環境に備えたい人にとっては、有力な選択肢となり得ます。
大切なのは、「保険か投資か」を二者択一で考えるのではなく、自分の収入・税制・運用期間を踏まえてどちらを選ぶかを判断することです。
