【アクチュアリーが解説】支払った保険料のうち、どれだけが実際の保障に使われているのか?

     

支払った保険料のうち、どれだけが実際の保障に使われているのか?

保険料の中身を数値で見る。

毎月きちんと払っている生命保険料。けれども、そのお金が「どのくらい将来の保障に充てられているのか」を意識したことはありますか?

銀行に預ければ利息がつき、投資信託なら運用実績が見えるのに、保険の場合は「支払った保険料がどのくらい自分のために使われるのか」がはっきり見えません。 もしかすると、思っていた以上に少ない割合しか保障に回っていないかもしれません。

本記事では、アクチュアリーの視点から「保険料の中身を数値化する方法」を解説します。

純保険料にも会社の取り分が含まれている

純保険料は「保険金や給付金の原資」として計算されますが、実際には少し割高に設定されています。

これは、予定死亡率や予定利率といった計算基礎率に「安全割増」というリスクへの余裕が加えられているためです。安全割増は予期しない変動に備えるための仕組みですが、もし大きな変動が起こらなければ、その分が契約者に戻ることはなく、保険会社の利益になります。(※有配当契約の場合は、一部が配当として戻ることがあります。)

つまり、保険料を払ったときに「実際にどれだけが保険金・給付金として戻ってくるのか」ははっきりとは見えないのが現状です。

そこで本サイトでは、営業保険料に対する安全割増や付加保険料を含まない真の純保険料の割合を給付率として定義し、給付率の算出を試みることにしました。

\[ \begin{align} \text{給付率} &= \frac{\text{真の純保険料}}{\text{営業保険料}} \\ \text{正味給付率} &= \frac{\text{真の純保険料}}{\text{営業保険料} – \text{節税効果}} \end{align} \]

給付率を正確に計算するのは難しい

給付率を出すのは、専門家であるアクチュアリーにとっても簡単ではありません。主な理由は次の2つです。

商品ごとに仕組みが違うから

保障内容や健康状態のチェック方法など、保険商品の設計は会社や商品ごとに異なります。そのため「一律の給付率」を求めることはできません。

前提となるデータが公開されないから

予定死亡率や入院発生率などは、各社が自社の経験データをもとに設定します。外部の人がそのデータを見ることはできません。

それでも「目安」としての給付率は役に立つ

ただし、これらの理由があるからといって「給付率を考えない」のはもったいないと思います。 完全に正確でなくても、おおよその給付率を把握し、加入を検討している商品の設計や自分の健康状態を踏まえながら調整すれば、判断の参考になるからです。

このサイトでは、生保標準生命表や公的統計(簡易生命表・患者調査・NDBオープンデータなど)をもとに、安全割増を含まない「真の純保険料」を試算しています。もちろん、これは商品ごとの特性や個々の加入者の状況をすべて反映したものではなく、あくまで参考値にすぎません。 それでも、営業保険料と見比べることで「支払った保険料のうち、どのくらいが保障に使われているか」をイメージすることができます。

保険料の見えにくい部分を数値化することで、納得感を持って保険に加入できるようになります。

具体例

  • 営業保険料:1,000円
  • 節税効果(生命保険料控除など):300円
  • 計算した純保険料:600円

この場合、節税効果によって実質の負担額は700円(=1,000円-300円)になるので、純保険料600円を700円で割った値=86%が正味給付率となります。つまり、節税効果を考慮すると実質的に支払った保険料のうち平均して86%が戻ってくる計算になります。

  • 給付率=60%(600円÷1,000円)
  • 正味給付率=86%(600円÷(1,000円-300円))

まとめ

  • このサイトでは、安全割増を除いた「真の純保険料」を試算し、営業保険料との比較ができます。
  • その結果をもとに「支払った保険料のうち、どのくらいが平均して戻ってくるか」を把握できます。
  • これにより、複数の商品を比べたり、加入すべきかどうかを考えるときの判断材料となります。

自分が加入を検討している保険商品の給付率を把握することで、納得して保険に加入できるようになれば幸いです。