【アクチュアリーが解説】生命保険の分類

     

生命保険の分類

生命保険の分類についてアクチュアリーが解説します。

分類の意義

生命保険とひとことで言っても千差万別です。「どのようなリスクを」「どのような期間」「どのような方法で」移転するかという構造の違いを踏まえた分類を行うことで、みなさまのニーズに合致した商品を見つけやすくすることができます。この記事では、保険数理や法制度の観点から、生命保険の主要な分類軸を整理・解説します。

保障内容による分類

最も基本的な分類は、「どのようなリスク(不確実性)を対象にしているか」です。

死亡保険(Mortality Risk)

被保険者の生死に直接関わるリスクを対象とする商品です。遺族の生活保障や住宅ローンの弁済、子どもの教育資金確保などの目的で利用されます。

年金保険(Longevity Risk)

想定していた年齢よりも「長生きする」もリスク(資金不足のリスク)を対象とする商品です。個人年金保険が代表で、被保険者が一定の年齢を超えて生存している場合に給付を行います。

医療保険(Morbidity Risk)

入院、手術、がん、就業不能など疾病や傷害に伴うリスクを対象とする商品です。医療費あるいは所定の状態に対する定額給付や日額給付を通じて家計の負担を軽減します。

保険業法上の分類

   
分野 リスク 給付の性格取扱会社
第一分野 生死(死亡・長寿) 定額給付(契約時に決めた金額を払う) 生命保険会社
第二分野 物的損害・賠償責任 実損填補(実際の損害額を補填する) 損害保険会社
第三分野 疾病・傷害・介護 定額給付/実損填補 生保・損保ともに可

保険業法とは、保険会社が従うべきルールを定めた法律で、契約者保護を主たる目的としています。この法律では、生損保兼業を原則禁止しているため、取り扱える商品が法律上明確に区分されています。

生命保険会社が取り扱うのは「人の生死に係る保険で定額給付のもの」であり、これは第1分野と呼ばれます。これに対して損害保険会社が取り扱うのは、「偶然の事故に伴う損害について実際の損害額を補填するもの(実損填補)」であり、第2分野と呼ばれます。

ただし、ヒトの疾病・傷害に対して給付を行う商品は第1・第2の両方の特性を有しているため、第3分野として位置づけられ、生命・損害のいずれの会社でも取り扱える仕組みが整えられています。医療保険やがん保険などは第3分野に分類され、生命保険会社と損害保険会社の両方が商品の開発・販売を行っています。

加入目的による分類

加入者の目的に着目した分類も重要です。

生命保険の基本的な役割は「不確実な損失を確実なコスト(保険料)に変換してリスクを移転すること」ですが、個々の商品は主たる目的によって大別できます。万一の際の保障を主目的とする商品を「保障性商品」と呼び、代表的な例は掛け捨て型の定期保険です。

これに対して、将来の特定目的(老後資金や教育資金、葬儀費用など)を計画的に準備することを主目的とする商品を「貯蓄性商品」と呼び、終身保険や養老保険、学資保険、個人年金保険などが該当します。貯蓄性商品は払込期間や運用の関係で解約返戻金が発生し、ある条件下で払込保険料総額を上回る返戻が期待できる設計もあります。

「保障性」と「貯蓄性」は排他的ではなく、多くの商品が両面を併せ持ちます。

契約者配当の有無による分類

契約者配当の有無は商品選択における重要な特徴です。

有配当保険では、実際の死亡率の動向や運用利回りの変動に応じて当初設定した保険料の一部が契約者に配当として還元されます。設計上は、当初に保守的な前提で保険料を高めに設定しておき、一定期間経過後に実績に基づき保険料の一部を契約者に返すことで、実質的な保険料を給付に要したコストと一致させます。保険会社に立場からみると、有配当契約は無配当契約よりもリスクが低くなる傾向にあるため、期待される正味保険料(=表面上の保険料から将来配当相当額を控除した実質的な保険料)は無配当契約より低くなることが期待されます。つまり、「有配当契約の保険料 > 無配当契約の保険料 > 有配当契約の正味保険料」となります。

日本の大手生命保険会社が営利を目的とする株式会社ではなく、相互扶助を理念とする相互会社であったということや、保険業法が平成8年に全面改正される以前はどの保険会社も同じ保険料設定を行う必要があったという歴史的な背景もあり、有配当保険が一般的でした。特に、バブル期はどれだけ多くの配当を契約者に返還できるかで各社は競い合っていました。しかし、近年の低金利環境下では、最初から保険料が安い無配当契約が主流となっています。

保険料払込回数による分類

保険料払込回数は家計のキャッシュフローに影響を与えるため重要です。

契約開始時に保険料を一括で支払う保険を「一時払保険」といいます。保険会社は預かった資金をすぐに運用に回せるため、その分保険料が割り引かれ、保険料の総支払額は最も安くなります。

契約期間にわたって均等に保険料を支払う保険を「平準払保険」といいます。保険会社は保険料の払込があるまで運用をできず、その間に金利などの経済環境が変動するリスクもあります。したがって、保険料の総支払額は一時払保険よりも高くなります。平準払保険は保険料を払う間隔に応じて年払や月払に細分化され、家計のキャッシュフローに合わせた選択が可能です。

なお、保険料払込期間は保険期間と一致するとは限りません。たとえば終身保険では、保険期間は一生涯である一方、保険料の払込期間は「10年払」「60歳払済」「終身払」など複数の選択肢があります。また「前納」は将来の保険料を前払いする制度であり、契約時点で全保険料を支払う一時払とは法律上・会計上の位置付けが異なる点に注意が必要です。

契約者による分類

契約者が誰であるかも分類の要点です。個人が契約者となるものを個人保険と呼び、加入者のライフイベントや資産形成ニーズに応じた細やかな設計が行われます。一方、企業や自治体、金融機関が契約者となる団体保険は、団体割引や一括契約に伴う利点を生かして従業員福利厚生や住宅ローン債務者保護(団体信用生命保険)などに利用されます。

  • 個人保険: 個々人の健康状態を診査(告知や医師の診査)して引き受けます。健康状態が悪いと加入できない(逆選択の防止)など、厳格な審査があります。
  • 団体保険: 企業や団体単位で加入します。募集や健康状態の診査にかかる事務コストが低いため、一般的に個人保険より割安な保険料率が設定されます。

まとめ

生命保険の商品群は多様であり、どの分類軸を重視するかは分類の目的によって異なります。法律上の取り扱い、保障の対象、加入目的、払込回数、配当の有無、契約者の属性など複数の軸を組み合わせて総合的に理解することが望まれます。