【アクチュアリーが解説】定期保険の保険料はどれだけ給付に使われる?加入のポイントと収入保障保険・団信の活用

     

定期保険の保険料はどれだけ給付に使われる?加入のポイントと収入保障保険・団信の活用

定期保険に入る前に知っておきたい「保険料の使われ方」をアクチュアリーがわかりやすく解説。給付率や純保険料、子育て世代におすすめの収入保障保険や団信の活用法も紹介します。

保険は助け合いの仕組みですが、「支払った保険料のうち、自分(または遺族)のためにどれだけ使われるのか」は誰でも気になる点です。この記事では、当サイトが定義した指標「給付率」を使って、定期保険の“中身”を分かりやすく説明します。

定期保険の給付事由

定期保険の給付事由はシンプルで、主に 「死亡」 と 「高度障害」 の2つです。

死亡

保険期間中に被保険者が死亡した場合、契約時に定めた死亡保険金が支払われます。

例:30歳男性が「60歳までの定期保険(死亡保険金 1,000万円)」に加入した場合、60歳までに死亡すると、遺族に1,000万円が支払われます。保障はあくまで保険期間に限定されるため、60歳を過ぎて生存している場合には給付はありません。

高度障害

多くの定期保険では、死亡に加えて 「高度障害状態」 にも給付があります。

高度障害とは、例えば以下のように「日常生活に著しい制限が生じる状態」を指します。

  • 両眼の視力を全く失った場合
  • 手足の機能を永続的に失った場合
  • 介護なしでは日常生活が著しく困難な場合

この場合も、死亡時と同額の保険金が支払われます。 一度高度障害保険金が支払われると、契約は終了し、その後の死亡に対しては改めて保険金が支払われることはありません。

定期保険がおすすめの人

定期保険は、特に 「万一のときに遺族の生活を守る必要がある人」 におすすめです。

その中でも代表的なのが、以下のようなケースです。

子育て世代のご家庭

小さな子どもがいる家庭では、教育費や生活費など将来必要となる支出が多くあります。世帯主に万一のことがあった場合、遺族に十分なお金を残せるかどうかは大きな心配ごとです。

定期保険なら「子どもが独立するまでの20〜25年間」など、保障が必要な期間に大きな金額を備えることができます。

例:30歳で加入し、子どもが大学を卒業する50歳までを保障期間とする。万一のときには、教育費や生活費をまかなえるように、2,000万〜3,000万円といったまとまった死亡保険金を受け取れる。

子どもの成長に合わせて「必要な時期だけ大きな保障」を効率よく準備できるのが、定期保険の強みです。

所得を得ていない配偶者がいるご家庭

配偶者が専業主婦(主夫)である場合、世帯主の収入が生活を支える柱になっています。このような家庭では、もし収入源を担う世帯主が亡くなってしまうと、遺族は大きな経済的負担を抱えることになります。

定期保険であれば、「遺族年金だけでは不足する部分を補う」 ことが可能です。

定期保険の給付率

「給付率」は、営業保険料(=実際に契約者が支払う保険料)に対する、“真の純保険料”の割合を指します。

給付率 =真の純保険料÷営業保険料

ここでいう「真の純保険料」は、将来の死亡・高度障害に対する期待支払だけを指し、募集手数料や事務費、保険会社の設定する安全割増(利益部分)など保険会社の経費・利益を除いた金額です。

給付率は「支払った保険料のうち何%が純粋に保障のために使われるか」を示す指標です。 給付率をみれば、支払った保険料のうち どれだけが将来の死亡保険金支払のために使われるか がわかります。

計算前提

当サイトでは定期保険の給付率を以下の前提で見積もりました。

  • 保険金額 3,000万円
  • 保険期間 30年
  • 月払

純保険料を計算するにあたり、予定利率( = 保険会社が契約者に保証する運用利回り)を2.0%としています。これは、国債利回りの直近の動向や、日銀の物価上昇目標を踏まえた設定です。

営業保険料は東京海上日動あんしん生命のホームページより取得しました。(取得日: 2025年10月1日)

計算結果

男性(保険金3,000万円・保険期間30年・月払)
年齢 純保険料(円) 営業保険料(円) 給付率
25歳2,7297,29037.4%
30歳4,0349,15044.1%
35歳6,21112,24050.7%
40歳9,57716,74057.2%
45歳14,81521,87067.7%
50歳23,74333,84069.4%
55歳38,84855,17070.4%
女性(保険金3,000万円・保険期間30年・月払)
年齢 純保険料(円) 営業保険料(円) 給付率
25歳1,8705,88031.8%
30歳2,6916,99038.5%
35歳3,8248,52044.9%
40歳5,34310,50050.9%
45歳7,83011,94065.6%
50歳12,17717,82068.3%
55歳20,39030,30067.3%

※ 純保険料の計算には、当サイトが開発した純保険料計算ツール Ver 1.0.2を使用しました。

純保険料は 男性>女性、高齢層>若年層 の順で高くなる傾向があり、営業保険料も同様の傾向を示します。一方で 給付率は若年・女性で低く、年齢が上がる・男性で高くなる 傾向が見られます。言い換えると、保険料が高いほど給付率は高くなる、という関係が本試算では確認できます。

なぜ保険料が安いほど給付率が低くなるのか

保険料が安いほど給付率が低くなる理由は保険会社の費用構造にあります。

営業保険料は「純保険料+付加保険料」で構成されています。

付加保険料は、新契約費・維持費・集金費の3つで構成され、このうち新契約費が大きな割合を占めます。新契約費には、新契約に伴う募集手数料・営業インセンティブ、初期システム費用、商品開発費などが含まれます。

保険料算定の実務において、新契約費は「保険金額に応じた比例額(=保険金額×一定率)」で算出されることが一般的です。結果として、保険金額が同じであれば、新契約費の絶対額は年齢に関係なく同じになります。 

したがって、分母である営業保険料に占める「保険金支払いのための純保険料」の比率(=給付率)は若年で低く、年齢が上がるほど純保険料の比重が増して給付率が上がる、という関係が生まれます。

加入を検討している方へのアドバイス

「必要以上に大きな保険金額」を選ばないこと

定期保険は少ない保険料で大きな保障が得られるのが魅力です。そのため、『支払った保険料に対して期待値ベースでどのくらい受け取れるか』という損得だけで商品の価値を判断することはできません。

しかし、あえて損得を計算すると、保険料が少ない若者ほど保険料のかなりの割合が保険会社の運営費用に回り、平均的に受け取れる給付は相対的に低くなります。

したがって、漠然と不安だからといって過剰に大きな保険金額を設定するのではなく、「自分にとって本当に必要な保障額」を冷静に見積もり、必要最小限を確保することが合理的です。

収入保障保険は「子育て期のニーズ」に合う設計

収入保障保険は、被保険者が死亡した場合に年金形式で遺族へ給付される商品です。

例えば、基準額を月10万円、保険期間を60歳までとした場合、万一のときから毎月10万円を60歳まで受け取ることができます。

早期に亡くなった場合は給付期間が長くなり、受取総額も大きくなります。逆に、時間の経過とともに残りの給付期間は短くなり、実質的な保障額は小さくなっていきます。

この仕組みは「子どもが小さい時期には保障を手厚くし、成長とともに必要保障額を自然に減らしていく」という子育て期特有のニーズに合致しています。さらに、死亡率が高くなる高齢期の保障額を抑えることで、保険料を効率的に抑えられるという利点もあります。

住宅ローンがあるなら「団体信用生命保険(団信)」で代替可能な場合もある

住宅を購入予定の方で、万一の際にその家を売却して資金を得られる選択肢がある場合には、定期保険の代わりに団信を活用できるケースがあります。

団信に加入すると、被保険者が死亡または所定の高度障害となった場合に、住宅ローン残高が保険金で一括返済されます。ローン契約に付随しているため、別途大きな定期保険を契約しなくても、保障が確保できる仕組みです。

また、団信の保険料はローン金利に組み込まれており、契約者が個別に支払う必要はありません。さらに、保険会社にとって募集コストが低いことから、結果として金利への上乗せも比較的抑えられている可能性があります。

物価上昇に注意

必要な保障額を見積る際には物価上昇に注意する必要があります。

死亡保険金は名目額で支払われるため、時間が経つと実質価値(購買力)は低下するためだす。特に教育費や生活費の上昇が懸念される場合、将来の必要額に対してバッファーを設けるか、見直し可能な保障設計を検討すると良いでしょう。

まとめ

  • 若年で給付率が低く、年齢が上がるほど給付率は高まります。主要因は新契約費が保険金額比例で設定されており、純保険料が小さいと新契約費の割合が相対的に大きくなるためです。
  • 『必要最低限の保障』を冷静に見積もること、収入保障保険や団信など目的に応じた商品を検討することを推奨します。

当サイトの純保険料計算ツールを使えば、だれでも保険会社の経費や利益を含まない純保険料を計算することができます。ぜひ試してください。